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1.造血幹細胞の自己複製と分化の制御機構の解明

Keyword: 造血幹細胞、 自己複製、 分化、 非対称性分裂, 発生

 

 

当研究室では、造血幹細胞をモデルとした幹細胞生物学の研究を行なっています。近年、様々な胚性幹細胞や成体幹細胞(組織特異的幹細胞)の存在が明らかとなり幹細胞研究分野が大きく発展しつつあります。造血幹細胞は一世紀も前からその存在が予測され、最も早くに同定された幹細胞です。これまでに、造血幹細胞研究は幹細胞に共通する基本コンセプトを構築してきました。しかし、それらは必ずしも検証されていません。そのため、多くの重要な疑問が未解決のままです。中には半世紀以上にわたって存続している疑問もあります。これらの疑問に答えるための研究は生物学ならびに医学の分野において非常に重要であり、チャレンジングです。 造血幹細胞は個体の一生にわたってすべての血球系をクローナルに維持することができます。造血幹細胞の持つ自己複製能と多分化能がこれを可能にします。幹細胞研究を行なう上で、造血幹細胞の有利な点は分化誘導が比較的容易なことです。1個の造血幹細胞から多様な血球をin vivoあるいはin vitroで分化させることができます(図1を参照)。造血幹細胞研究は再生医療、遺伝子治療のさらなる発展に大きく貢献すると期待されます。

1)非対称性自己複製の分子基盤の解明

多細胞生物は非対称性分裂によって多様な細胞を産生しながら発生し個体を形成します。造血幹細胞もまた非対称性分裂によって多種類の血液細胞を産生すると考えられています。幹細胞システムを維持するためには自己複製も必要であり、この両方を同時に可能にするのが非対称性自己複製分裂です。我々はこの非対称性自己複製分裂を培養皿の中で再現することに初めて成功しました。この実験系を用いて自己複製と分化の分子基盤を明らかにしようとしています。

2)造血幹細胞発生の研究

個体の発生に伴い造血幹細胞プールが増大します。しかし、そのメカニズムは不明です。我々は造血幹細胞の発生機序を明らかにすることが、試験管内で造血幹細胞を自由自在に増やすことにつながると考えています。最近、胚性幹細胞から造血幹細胞を分化誘導する段階を明確にしました。これをモデルとしてマウス個体内でいつ、どこで、どのようにして造血幹細胞が発生するかを明らかにしようと試みています。

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2.献血の要らない血液製剤供給システムの開発・幹細胞の維持分子機構の解明

Keyword:iPS細胞、血液、細胞記憶、細胞接着、インテグリン

献血の要らない血液製剤供給システムの開発・幹細胞の維持分子機構の解明

 

 

 

近い将来の医療システムの一つとして、献血ドナーに依存しない輸血療法を目指した研究を展開しています。一つの候補が、バンク化が推進されている様々な人工多能性幹細胞(iPS細胞)をソースとする赤血球や血小板の産生システムです。研究グループでは、今までにヒトiPS細胞からの基本的な血小板産生系、血小板の不活性化法、in vivoでの機能評価系を開発してきました。現在は効率的産生を行うための培養技術開発に重点を置いています。それ以外にも、ヒトiPS細胞の樹立や分化における様々な問題点の解決につながる研究や組織幹細胞の細胞記憶や未分化維持に働く分子機構の解明を通じて、ヒトiPS細胞から造血幹細胞を誘導し、その存在を証明する ための研究も行っています。

 

→ 江藤先生の京大移動に伴い、チームも京大に移動しました。

  http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/eto_summary.html

 

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3.より有効で安全な造血幹細胞移植療法の開発を目的とした幹細胞治療研究

Keyword: 造血幹細胞移植、遺伝子治療、移植片対宿主病(GVHD)、先天性免疫不全症、iPS細胞

 

 

先天性免疫不全症などの遺伝病、白血病などの血液悪性疾患を含む種々の難治性疾患に対しては疾患の根治を目的として造血幹細胞移植が行われます。遺伝病に関しては、自己の造血幹細胞に対して体外で遺伝子修復操作を行い、機能を正常化した後に移植する、いわゆる遺伝子治療が実際の患者さんに対して行われており、私も北海道大学においてアデノシンデアミナーゼ (ADA) 欠損症患児2例に対して行われた遺伝子治療を経験しております。こうした臨床経験、過去の基礎研究から、これらの治療法はいまだ発展途上にあり克服すべき問題点も多く残されており、理想の治療法の確立には至っていない現状を認めざるを得ません。本研究グループではこのような状況に鑑み、究極の移植療法の開発を可能にすべく、本研究室に蓄積された造血幹細胞生物学に関する多くの知見、豊富な経験を活用しつつ、次のような造血幹細胞研究を進めています。

  • 1)疾患モデルマウスを用いた同種造血幹細胞移植、遺伝子治療の研究
  • 2)移植細胞の生着不全のメカニズムの解明およびその克服法の開発
  • 3)iPS 細胞を用いた疾患マウスの遺伝子細胞治療モデルの確立。

グループのモットーは、臨床の場に応用可能な成果を常に念頭に置き研究を進めることにあります。そのため進行中のプロジェクトの中からさらに前臨床試験を推し進め、臨床試験の実施に結びつけることを計画しています。

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4.造血器疾患に対する幹細胞治療の開発

 

 

本研究グループでは、白血病に代表される造血器悪性腫瘍、造血幹細胞移植後の日和見感染症、自己免疫学的機序による造血障害などの造血器関連疾患を治療するための戦略を免疫学的、血液病理学的見地から立案し、主に動物モデルを用いて実証し、そして臨床応用することを目的として以下の研究を進めています。

(1)抗腫瘍効果を強化する治療法の開発

難治性造血器腫瘍に対して長期寛解を期待できる唯一の治療は同種造血幹細胞移植療法であることが示すように、生体には悪性腫瘍に対抗する免疫システムが備わっています。しかし多くの場合、そのシステムが疲弊していたり腫瘍を有効に認識できなかったりすることで、悪性腫瘍の制御に失敗していると考えられます。我々はT細胞の遺伝子改変技術やiPS細胞からの血球誘導技術を駆使することで免疫システムをリフレッシュし、抗腫瘍効果を強化する治療法を開発しています。

(2)造血器悪性腫瘍モデルの開発及び、解析

近年その存在が実験的に証明された白血病幹細胞(がん幹細胞)から、白血病がどのように発症してくるのか、白血病幹細胞はどこに存在しているのか、どのような治療がその根絶に有効かということを知るために、本研究室に蓄積された正常造血幹細胞の知見と経験を活用し、純化造血幹細胞への遺伝子導入によって新たな造血器悪性腫瘍モデルを開発し、解析を行っています。

(3)選択的細胞死誘導が可能なシステム開発

ES/iPS細胞治療の臨床応用において必ず問題となる奇形腫形成、分化細胞からの腫瘍化の危険性を回避するために、体外からの選択的細胞死誘導が可能となるシステムを開発しています。また本研究に用いられる遺伝子と同一の遺伝子を用いて、学内外のグループと共同で「同種造血幹細胞移植後の再発白血病に対する自殺遺伝子導入ドナーリンパ球輸注療法」を臨床研究として行っています。

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5.肝幹・前駆細胞の増殖・分化誘導機構の解明と再生医療への応用

Keyword: 肝発生, 肝再生. 肝幹・前駆細胞, 細胞移植療法

 

 

肝臓は、血清蛋白質の合成や毒物・アルコールの解毒、アミノ酸や脂質の代謝という多様な機能を果たすことで、生体の生命維持に重要な役割を果たしています。一方で、胎生期の肝臓はほとんど代謝機能を持たない代わりに、血液の元のなる造血幹細胞が活発に増殖しています。つまり、発生過程において造血器官から代謝器官へと、その機能をドラスティックに変化させるのが肝臓の特徴です。また、肝臓のもう一つの特徴として、固形臓器としては珍しい高い再生能力があります。全体の70%を失っても約1週間後には元の大きさまで回復することが知られています。しかし、他の再生臓器(血液や毛、皮膚)と異なり、通常の肝再生には幹細胞は関与しておらず、肝臓における幹細胞の性質や機能については不明な点が未だ多くあります。肝炎やアルコール摂取による肝障害等によって誘導される肝硬変・肝癌等の末期肝病態の根治療法としては、現在、脳死または生体肝臓移植が用いられています。しかし、ドナー不足の問題から新たな療法、幹細胞を用いた再生医療が注目されています。当研究室では、FACSを用いたマルチカラー染色法により、胎生期および成体肝臓から効率的に肝幹・前 駆細胞を分離することに成功しています。また、疾患モデルマウスに肝細胞、肝幹細胞を移植し病態を改善させる治療モデルを構築しています。これらの手法を用いることで、肝幹細胞の増殖・分化の分子メカニズムを解明するとともに、幹細胞を用いた肝疾患の効率的な治療モデルの確立を目指します。

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6. 動物の発生原理を利用した臓器再生の試み

Keyword: 臓器再生、胚操作、ES細胞、iPS細胞

 

現在の医療では臓器の損傷・疾患の治療には、人工臓器や臓器移植による臓器置換療法が試みられています。しかし、人工臓器では、臓器の機能を完全に代替することは難しく、また、臓器移植にも、免疫拒絶反応や感染、移植臓器の不足といった問題があります。このような状況下、ES細胞やiPS細胞を用いた「再生医療」には、大きな期待が寄せられています。しかし現在のところ、臓器そのものの再生は実現していません。これは、多種多様な細胞の立体的な集合体である臓器の発生過程を、試験管内で再現することが困難であるためです。我々のグループでは試験管ではなく動物個体を用いて臓器を再生し、移植臓器として提供するための新しい技術の開発を目指しています。具体的には、マウスなどの小型動物をモデル動物として用いた新たな臓器再生法の確立、さらに、将来的な再生医療へ の応用を見据え、ブタの体内でサルの臓器を再生するといった、種を超えた動物間での 臓器再生や、再生した臓器の移植を試みるなど、再生医療のための基盤技術の確立に向けて研究を展開します。

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東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センターについて
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