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1.造血幹細胞移植を用いた難治性造血器疾患の治療

幹細胞移植部門は、医科研病院においては血液・腫瘍内科の移植部門として造血幹細胞移植を用いた難治性造血器疾患の治療にあたっています。わが国では骨髄移植は70年代から80年代にかけて白血病等を対象として実際の応用が始まり、医科研でも1983年に同種骨髄移植の第一例目を経験しています。その後90年代に入ると、医科研・病態薬理研究部(現・分子療法分野)がその臨床開発において重要な部分を担ったG-CSFが実際に使用可能となり、造血幹細胞を末梢血中に動員して移植細胞ソースとして用いることが可能となりました。さらに91年に設立された日本骨髄移植推進財団(骨髄バンク)の発足により移植ドナー源が拡充され、さらには医科研として基礎的研究および社会基盤整備に貢献しながら、1998年8月には成人患者を対象とした臍帯血移植を開始しました(図1)。これまで600例以上の同種移植の中で200例を上回る臍帯血移植をおこない、その安定した成績は本治療法の世界的な普及に大きく貢献してきました。このように歴史的にも医科研は造血細胞移植の開発・普及に重要な役割を果たしてきましたが、将来にわたって移植療法が発展的に消滅し全く新しい考え方に基づく治療に置換されることを念頭において、臨床的視点を重視した問題解決志向での研究を進めております。

造血幹細胞移植を用いた難治性造血器疾患の治療

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2.造血幹細胞移植に関する問題解決志向型研究

いまだに同種造血幹細胞移植には問題が山積しており、再発、GVHD・移植後免疫反応、免疫不全状態における日和見感染症、移植前処置による臓器障害、移植細胞の生着不全、ドナー確保およびその安全性の確保など、解決を要する危急の課題が山積しています。 多様化しながら発展してきた造血幹細胞移植において、白血病など悪性疾患を対象とした際の最大の問題点は依然として移植後の再発であり、再発率を低下させるための新たな方法の臨床開発が急務であり、(1)新たなコンセプトに基づく前処置法、(2)腫瘍特異的免疫療法、の開発が検討されています。

前処置の改良法としては、非特異的な化学療法の強度を高める以外の方法で腫瘍幹細胞を特異的に抑制する方法が求められます。細胞毒性をもつ薬剤の腫瘍へのターゲティング、腫瘍特異的分子を標的とする治療の組み入れ、白血病細胞の周囲環境からのサポートを絶つ方法などが考えられ、それぞれの研究課題について共同研究者とともに取り組んでおります。 移植をターゲットとした免疫療法の応用法としては、免疫担当細胞(CTL、γδT、NK、NKTなどの細胞)の細胞免疫学的な特徴を保持させつつ、遺伝子改変などの方法を用いて最大限に抗腫瘍活性を高める方法を開発し、同種移植後細胞性免疫療法としての臨床応用を目指します。 また、同種移植の最大の問題点であるGVHD(移植片対宿主病)やTMA(血栓性微小血管障害)などの移植後炎症性合併症の病態解析および診断法の確立、とくに臨床上有用なバイオマーカーの同定は、臨床成績の向上に確実に寄与すると考えています。GVHDの予防・治療には、現在、T細胞を中心とした免疫・炎症細胞カスケードの一連の流れを止める各種の免疫抑制剤が用いられていますが、いまだに至適投与法は確立されているとは言いがたいのが現状です。免疫細胞における機能性分子の発現抑制レベルを指標として、GVHDの進行度や免疫再構築のスピード、移植後再発の頻度などの臨床像との相関を明らかにすれば、現在の免疫抑制療法を新たな段階での移植後免疫調整法として確立することが可能となると考えております。また、細胞性免疫による過剰反応・不全状態が問題であるばかりではなく、液性免疫を含めた複雑な免疫ネットワークの調整不全が様々な移植後の病態と関連すると想定した場合、特に臍帯血移植を含めてHLA不一致ドナーソースを用いる頻度が高まった昨今では、抗HLA抗体など液性免疫が果たす役割についても、解析を進める意味が高まっていると考えています。

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3.臍帯血を用いた新しい移植療法の開発

臍帯血に含まれる造血幹細胞および免疫担当細胞は、成人由来の細胞とは異なるユニークな性質を有しており、現在、臨床応用されている以上の潜在能力を有する細胞源であると考えられています。実際に、医科研で1998年から始めた臍帯血移植では、それまでの骨髄移植と比べても勝るとも劣らない成績が得られているのみならず、重度の慢性GVHDが少なく、免疫学的な観点から回復動態もすぐれている点が多いことが、長期生存患者のQOL向上に直結していると考えられます。これらの特性を生かしながら、現在行われている臍帯血移植を土台として、その欠点を改善していくことは、中短期的な視点から臨床成績を向上させるための一つの方向性であると考えています。造血幹細胞の生着向上と造血回復の促進を目指した幹細胞の造血ニッシェへのホーミングの効率化は、臍帯血移植における大きな臨床課題であり、これまでも世界的に取り組まれてきていますが、臨床的有用性が明らかになった研究成果は未だに出ていない状況です。また、抗原暴露の経験がないナイーヴな臍帯血中の免疫細胞から、いかに早期に(腫瘍・感染症)抗原特異的な機能的免疫担当細胞を誘導し、臨床応用可能なレベルに増幅という課題に答えることが出来れば、現在の臍帯血移植は格段に安全性が増すと考えております。

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4.間葉系幹細胞など、その他の細胞ソースを用いた細胞療法の開発

これまでの基礎研究および臨床的経験から、間葉系幹細胞は免疫抑制作用を有するとともに多くの組織の発生と傷害後の組織修復に不可欠な細胞であることが判っています。したがって、その細胞性状を科学的に明らかにし、その特性を利点として利用する多面的な臨床展開は様々な疾患の治療成績の向上させることが期待されます。我々はこれまでの造血幹細胞ソースに組み合わせるなどの方法でこれらの特徴を生かした新規の細胞療法を目指したいと考えています。

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東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センターについて
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